天地否の意味|易経の卦辞と爻の読み方

天地否は、天と地の気が交わらず、人と人の思いが通じにくい、ふさがった時を表す卦です。卦辞は、正しい人が正しさを貫こうとしても報われにくく、大きなものが去って小さなものが来る時だと告げます。この卦を得たら、無理に打開しようとせず、身を慎んで力を内にたくわえ、流れが変わるのを待つことが答えです。

この記事の要点

  • 上卦は乾(天)、下卦は坤(地)で、天地が離れて交わらない形
  • 「否」はふさがること。通じにくく、耐える時を表す
  • 君子は徳を控えめにして難を避け、地位や報酬で栄えようとしない
  • 九四から転換が始まり、上九で「先には否がり後には喜ぶ」
  • 上下を逆さにすると、通じ合う地天泰になる

天地否の成り立ち(上卦と下卦)

天地否は、上卦が乾(☰・天)、下卦が坤(☷・地)の卦で、六十四卦の12番目です。読みは「てんちひ」で、「否」は打ち消しの「いな」ではなく、ふさがるという意味で読みます。

天が上、地が下にあり、見た目にはごく自然な配置です。ところが易では、これを交わらない形と読みます。天の気はもともと上へ向かい、地の気は下へ向かうので、天が上、地が下にあると、二つの気はますます離れていくからです。象伝は「天地交わらざるは否なり」と述べています。

内側の下卦が陰、外側の上卦が陽で、中身は弱いのに外見だけは強く見える形でもあります。直前の地天泰とちょうど裏返しの姿です。十二か月に卦を当てはめる見方では、否は旧暦の七月にあたり、陽の気が衰え、陰の気が勢いを増していく季節を表します。

序卦伝は、物事はいつまでも通じ続けることはできないとして、泰のあとに否を置いています。好調のあとに停滞がめぐってくるのは、自然の巡りの一部だという考え方です。

卦辞が伝えること:通じない時の身の処し方

天地否の卦辞は「否はこれ人に匪ず。君子の貞に利ろしからず。大往き小来る」です。人としての道が通じない時であり、君子が正しさを貫こうとしても、それが報われにくい。大きなもの、つまり陽が外へ去り、小さなもの、陰が内に入ってくる、という意味です。

この卦を得ると不安になる人が多いのですが、否は「悪いことが起こる」と告げる卦ではありません。上と下、自分と相手の気持ちが行き来しにくい時期だと教えているのです。たとえば次のような状態です。

象伝は、君子はこの時、自分の徳を控えめにして難を避け、地位や報酬で栄えようとしてはいけないと説きます。目立つ場所で力を振るうより、内側を整え、守りに徹する時です。否の六爻をたどると、九四で転機が訪れ、上九でふさがりが傾いて喜びに変わります。耐える時には終わりがある、というのがこの卦の大きな教えです。

恋愛・人間関係で天地否を得たとき

恋愛で天地否が出たら、二人の気持ちがかみ合いにくい時を表します。相手の心が離れたと決めつける必要はありませんが、今は強く働きかけても届きにくい時期です。

片思い・連絡が途絶えたとき

片思いで得たら、押しの一手は控える時です。返事を催促する、相手の予定に合わせて無理に会おうとするといった動きは、天と地がますます離れるように距離を広げます。今は自分の生活を整え、仕事や趣味に力を注いでください。連絡が途絶えた相手のことで心が占められているなら、その思いを紙に書き出すだけでも、気持ちの整理が進みます。

交際中・夫婦

交際中や夫婦なら、話がすれ違う、同じ部屋にいても心が通わないといった状態を表します。六二の爻辞は、相手に迎合して表面だけ合わせることを、大人の道ではないとしています。無理に機嫌をとるより、日々の挨拶や感謝のひと言など、小さな交わりを絶やさないことが、ふさがりを解く糸口になります。重い話し合いは、相手に余裕がある時期まで待つ方が実りがあります。

友人・職場の人間関係

人間関係では、言葉が誤解されやすい時です。意見の対立があっても、正しさを主張し続けるより、いったん引いて距離を置く方が傷を広げません。孤立しているように感じても、初六が示すように、志を同じくする少数の仲間とつながっていれば、この時期は乗り切れます。

仕事・選択・お金・待ち人で得たとき

仕事で天地否を得たら、上と下の意思が通じにくい時を表します。提案が通らない、上司と現場の考えが食い違う、取引先との交渉が進まないといった場面です。

象伝の「栄するに禄をもってすべからず」は、昇進や報酬を目当てに動くことを戒める言葉です。目先の条件に飛びつかず、筋の通った選択を守ってください。

お金の面では、出ていくものを抑え、守りに徹する時です。新しい出費の約束や大きな買い物は、急がずに先へ延ばすと安心です。待ち人は来るのが遅れ、連絡も途切れがちです。探し物は、天と地が離れている形から、ふだんの場所から遠く離れた所、しまいこんで目の届かない奥の方にあります。思うように動けない時期の過ごし方は、人生の停滞期の乗り越え方でも詳しく書いています。

初爻から上爻までの読み方

天地否の六つの爻は、下の三つがふさがりの中で身をどう処するか、上の三つがふさがりをどう終わらせるかを描いています。

初六は「茅を抜くに茹たり。その彙をもってす。貞なれば吉にして亨る」。地天泰の初九と同じ茅のたとえですが、ここでは仲間とともに身を引き、正しさを守ることが吉です。

六二は「包承す。小人は吉、大人は否にして亨る」。上の者に迎合すれば小人はうまく立ち回れますが、志のある人はふさがりに甘んじてこそ道が開ける、と説きます。

六三は「羞を包む」。ふさわしくない立場にいて、恥を内に抱えている姿です。自分の居場所を見直す時を表します。

九四は「命あれば咎なし。疇、祉に離く」。時の巡りが味方し、咎めがなくなります。仲間もその幸いにあずかる、転換の始まりです。

九五は「否を休む。大人は吉」。ふさがりを止める力を持つ位置です。危うさを常に心に留め、根の張った桑の株に結びつけるように足元を固めれば吉、と説きます。

上九は「否を傾く。先には否がり後には喜ぶ」。ふさがりがついに傾き、初めは閉ざされていたものが、後には喜びに変わる段階です。

天地否 爻ごとの要点と之卦
爻要点変わると(之卦)
初六仲間とともに身を引き、正しさを守る天雷无妄
六二迎合せず、ふさがりに甘んじて道を開く天水訟
六三ふさわしくない立場で恥を抱える天山遯
九四時の巡りが味方し、転換が始まる風地観
九五ふさがりを止める。足元を固めて吉火地晋
上九ふさがりが傾き、後には喜ぶ沢地萃

変爻と之卦の見方

変爻が一つなら、その爻の言葉を主に読み、陰陽を入れ替えた之卦を、これから向かう先として添えます。全体の手順は卦の読み方にまとめています。

天地否では、九四・九五・上九のいずれかが変爻のとき、ふさがりから抜け出す方向の読みになります。九五が変わると火地晋になり、地上に太陽が昇るように、停滞を抜けて明るく進む流れを示します。上九が変わる沢地萃は、人や物が再び集まってくる卦です。九四が変わる風地観は、すぐに動かず、全体をよく観察してから転機をつかむ流れです。一方、六二が変わる天水訟は、迎合や不満が争いに発展しやすい流れなので、言葉選びに気をつけて読みます。

天地否を上下逆さにしても、陰陽をすべて入れ替えても、一つ前の地天泰になります。泰が極まると否になり、否が極まると泰に戻る。ふさがりの時は、通じ合う時へ向かう途中でもあります。

ふさがった時期は、一人で考えるほど視野が狭くなりがちです。今の状況を誰かに聞いてもらうと、守るべき所と、そろそろ動いてよい所の区別がつきやすくなります。

よくある質問

天地否は悪い卦ですか

天地否は、人と人の思いが通じにくい時を表す、守りの卦です。悪いことが起こると告げる卦ではなく、無理に動かず力を蓄えるべき時期だと教えています。九四から転換が始まり、上九でふさがりは喜びに変わります。

天地否が出たら何をすればいいですか

強く働きかけるのを控え、身を慎んで内側を整えることです。新しいことは下準備にとどめ、出費や大きな決断は急がずに先へ延ばします。志を同じくする少数の人とのつながりを大切にすると、この時期を乗り切れます。

天地否が恋愛で出たら脈なしですか

脈がないと決めつける卦ではなく、今は気持ちが届きにくい時期を表します。返事の催促や無理な誘いは控え、挨拶や感謝など小さな交わりを続けてください。流れが変わるまで自分の生活を整えることが、関係を守ることにつながります。

天地否と地天泰はどう違いますか

上下逆さの関係で、表と裏をなす卦です。地天泰は天地の気が交わって通じ合う時、天地否は交わらずにふさがる時を表します。泰が極まると否になり、否が極まると泰に戻るという、巡りの関係にあります。

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