山天大畜(さんてんたいちく)の意味|易経の卦辞と爻の読み方

山天大畜は、大きな力や知恵を内に蓄え、満ちたところで大きな事に踏み出すことを表す卦です。卦辞は正しさを守るのがよく、家にこもらず外で力を用いれば吉、大きな川を渡るのにもよいと説きます。この卦を得たら、今は力をため込み、準備が整ったら思い切って挑むことが答えになります。

この記事の要点

  • 山の中に天がある姿で、大きな力を内に蓄える卦
  • 動かない山が、天の勢いを受け止めてためさせる形
  • 卦辞は、外で力を用い、大きな川を渡るのによいと説く
  • 恋愛では衝動を抑え、時間をかけて信頼を育てる時
  • 上九の「天の衢」は、蓄えた力で道が大きく開ける象

山天大畜の成り立ち(上卦と下卦)

山天大畜は、上卦が艮(☶)、下卦が乾(☰)でできた、六十四卦の26番目の卦です。艮は山で止まることを、乾は天で剛健さを表します。爻は下から陽・陽・陽・陰・陰・陽と並びます。

象伝は「天の山中に在るは大畜なり」と述べます。天ほどの大きな力が、山の中に収まっている姿です。山はどっしりと動かず、下から突き上げてくる乾の勢いを受け止めて、外へ漏らさずにためておきます。畜には、たくわえる、やしなう、とどめる、という意味があり、大畜は大いに蓄え、大いに養うことを表します。

六十四卦には、似た名前の風天小畜もあります。小畜は、柔らかな風が天の勢いを少しだけ引き留める卦でした。大畜は、動かない山が天の力をしっかり受け止める卦で、蓄えられるものの大きさが違います。小さな足止めが小畜なら、大きな力をためて次に備えるのが大畜です。

一つ前の天雷无妄で偽りのない誠実さを身につけたあとに、はじめて本当の蓄えができます。そこで无妄の次に大畜が来ます。大畜は无妄を上下逆さにした形でもあります。

卦辞が伝えること:蓄えて、外で用いる

大畜の卦辞は「大畜は、貞しきに利ろし。家食せずして吉。大川を渉るに利ろし。」です。正しさを守るのがよく、家で食べずに外で働けば吉、大きな川を渡るような思い切った事にもよい、という意味です。

「家食せず」とは、家にこもって自分のためだけに力を使うのではなく、世に出て、力を人のために用いることです。昔は、賢い人が朝廷に招かれて俸禄を受けることを指しました。蓄えた力は、ためておくだけでは意味がなく、外で使ってこそ生きる、と卦辞は教えています。

「大川を渉るに利ろし」は、蓄えが満ちたあとの大きな挑戦を後押しする言葉です。順番が肝心で、力をためる時期を飛ばして挑むのではなく、十分に蓄えてから渡るからこそ、大川も越えられます。

象伝は、君子は先人の言葉や行いを多く学び、自分の徳を養うと説きます。大畜の「蓄え」は、お金や物だけでなく、知識や経験、人としての器を含みます。本を読む、先輩の仕事ぶりを学ぶ、過去の記録を調べる、といった学びの積み重ねが、大畜の時のいちばんの蓄えです。

恋愛・人間関係で山天大畜を得たとき

恋愛や人間関係の大畜は、急いで形にするより、時間をかけて中身をためていく時を表します。

片思い

片思いで大畜を得たら、気持ちをすぐにぶつけるより、ためて育てる時期です。今すぐ想いを伝えたくなっても、山が天の勢いを受け止めるように、その衝動をいったん内にとどめてください。そのあいだに、相手との会話を重ねる、共通の話題を深める、自分を磨くなど、関係の土台を蓄えていきます。気持ちが十分に育ち、相手との信頼が積み上がったところで伝えるほうが、大畜の時には実を結びます。

交際中・結婚・復縁

交際中なら、二人の将来に向けて蓄えを始める時期です。一緒に暮らすための貯金をする、互いの家族と少しずつ顔を合わせる、将来の働き方について話し合うなど、目に見えない準備を重ねることが関係を強くします。四爻の「童牛の牿」は、子牛の角に板をつけて、人を突く前に癖を正すことです。小さな不満や悪い癖は、大きくなる前に二人で直しておくと、のちの衝突を防げます。

復縁を占ったときは、すぐに動くより、自分を立て直して力をためる段階と読みます。相手と離れていた時間に何を学び、どう変わったかが、再会したときの言葉に表れます。

職場・目上の人との関係

人間関係では、尊敬できる人から学ぶ時期です。目上の人の話をよく聞き、経験から得た知恵を受け取ると、自分の器が大きくなります。昔の失敗談や判断の理由を尋ねてみると、本には載っていない蓄えが手に入ります。

仕事・選択で山天大畜を得たとき

仕事の大畜は、力を蓄えて次の大きな仕事に備える時です。資格の勉強をする、技術を磨く、人脈を広げる、資金を準備するなど、すぐには結果の出ない積み重ねに力を注ぐと、のちに大きく実ります。新しい挑戦をしたい気持ちがあっても、準備が整っていないなら、いったん足を止めて力をためてください。

九三の爻は、良い馬を走らせながら、日々車の扱いと身の守りを練習する姿を描いています。準備が整い、走り出せる段階に来ても、練習を怠らないことが肝心だと説いています。試験や大きな発表を控えているときに大畜を得たら、本番直前まで基本の確認を続けることが答えです。

転職や独立の迷いでは、卦辞の「家食せずして吉」が後押しになります。家にこもらず外で力を使うことを勧めているので、組織に属して能力を発揮する道や、蓄えてきた力を世に出す挑戦が向いています。ただし、初爻と二爻は、まだ力がたまっていない段階で動くことを止めています。自分が初爻や二爻の段階にいるのか、上爻に近いのかを見極めてから決めてください。一人で決めかねるときは、自分の経歴や準備の状況を誰かに話して、どの段階にいるのかを一緒に確かめてもらうと判断しやすくなります。

山天大畜 占う事柄ごとの読み
占う事柄大畜での読み心がけ
片思い気持ちをためて育てる時会話を重ね、信頼を積み上げてから伝える
交際中・結婚将来に向けた蓄えを始める時小さな癖は大きくなる前に直す
復縁自分を立て直して力をためる段階離れていた間の学びを形にする
仕事次の大きな仕事への準備期間資格や技術など、積み重ねに力を注ぐ
試験・発表備えを続けた先に道が開ける直前まで基本の確認を続ける
転職・独立外で力を用いる道が向く自分の準備がどの段階かを見極める
お金蓄えに向く時使う前に、ためる仕組みを整える
待ち人準備に時間がかかり遅れる来たときに迎えられる支度をする
探し物奥深くにしまい込んでいる収納の奥や積み重ねた物の下を探す

初爻から上爻までの読み方

大畜の六爻は、下の三本の陽が力をため、上の三本がそれを受け止める関係で読みます。下の爻は止められる側、上の爻は止める側です。

四爻と五爻は、力を抑える側の知恵を描いています。四爻は早めに手を打つこと、五爻は根本から整えることで、どちらも力ずくで押さえつけない点が共通しています。

変爻と之卦の見方

大畜の変爻は、蓄えた力がどんな形で外に出ていくかを示します。一つの爻が変わったときは、その爻辞を蓄えの段階として読み、之卦を、力が向かう先として添えます。

上九が変わると地天泰になります。天の大通りが開けた先に、上と下が通じ合う安泰があると読みます。六四が変わると、豊かさを表す火天大有になり、芽のうちに癖を正したことが、大きな実りにつながる流れです。初九が変わると山風蠱になり、勢いのままに進めば乱れを抱え込むことを示すので、止まる判断の重みが一段と増します。九三が変わって山沢損になる場合は、何かを減らして身軽にすることが、次の前進の準備になると読めます。

変爻が二つ以上あるときは、大畜の卦辞が説く「蓄えてから渡る」という順番を軸にして、之卦が蓄えの途中を表すのか、渡ったあとを表すのかを見分けると読みやすくなります。本卦と之卦のつなげ方は卦の読み方に、大畜のように止める側と止められる側に分かれる爻の見方は爻の読み方にまとめています。

よくある質問

山天大畜は吉卦ですか

吉の卦です。卦辞は正しさを守れば吉と説き、外で力を用いること、大きな川を渡ることにもよいと告げています。ただし、力を十分に蓄えてから動くという順番を守ることが条件です。

山天大畜の読み方は

「さんてんたいちく」と読みます。上卦の山(艮)と下卦の天(乾)の象に、卦名の大畜を続けた名前です。畜はたくわえる、やしなうという意味です。

風天小畜と山天大畜の違いは何ですか

どちらも天の勢いをとどめて蓄える卦ですが、とどめる力の大きさが違います。小畜は柔らかな風が少しだけ引き留める小さな足止め、大畜は動かない山が天の力をしっかり受け止めて大きく蓄える形です。

「家食せずして吉」とはどういう意味ですか

家にこもって自分のためだけに力を使わず、外に出て人のために用いれば吉という意味です。昔は賢い人が朝廷に仕えて俸禄を受けることを指しました。蓄えた力は、使ってこそ生きると教えています。

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