天雷无妄(てんらいむぼう)の意味|易経の卦辞と爻の読み方

天雷无妄は、作為や計算を捨て、天の流れに沿って自然体で誠実にふるまうことを表す卦です。卦辞は大いに通じると説く一方で、正しさを欠けば思わぬつまずきがあり、進むのによくないと戒めています。この卦を得たら、駆け引きや見返りへの期待を手放し、目の前のことに誠実に向き合うことが答えになります。

この記事の要点

  • 无妄は「妄り无し」。偽りや作為のない自然な姿を表す
  • 天の下を雷が行く姿は、天の巡りに沿った動きの象
  • 心が正しくなければつまずく。思いがけない出来事も含む
  • 恋愛では駆け引きをやめ、ありのままの気持ちで接する時
  • 六二は、収穫を当てにせず耕すことを説く

天雷无妄の成り立ち(上卦と下卦)

天雷无妄は、上卦が乾(☰)、下卦が震(☳)でできた、六十四卦の25番目の卦です。乾は天で剛健さを、震は雷で動くことを表します。爻は下から陽・陰・陰・陽・陽・陽と並びます。

象伝は「天の下に雷行き、物ごとに无妄を与う」と述べます。春になると天の下で雷が鳴り、その響きに目覚めるように、草木や虫たちが一斉に動き出します。誰かが命じたわけではなく、天の巡りに沿って、ありのままに動いている。この偽りのない自然な動きが、无妄の象です。

无妄は「妄り无し」と読み、偽りや作為、でたらめがないことを意味します。无は「無」と同じ意味の字です。また、无妄を「望むこと無し」、つまり予期しないことの意味に読む説もあり、思いがけない出来事という意味も、この卦には重ねて読まれます。自分が計算していないところで物事が起こる、という点で、二つの意味はつながっています。

一つ前の地雷復で正しい道に立ち返ると、心から偽りが消えていきます。そこで復の次に无妄が来ます。无妄を上下逆さにすると、力を蓄える山天大畜になります。

卦辞が伝えること:正しさを欠けば、つまずく

无妄の卦辞は「无妄は、元いに亨りて貞しきに利ろし。其れ正に匪ざれば眚い有り。往く攸有るに利ろしからず。」です。偽りのない心で動けば大いに通じ、正しさを守るのがよい。けれども、その心が正しくなければ過ちやつまずきがあり、進むのによくない、という意味です。

前半には元・亨・利・貞の四つの徳がそろい、強い吉の言葉が並びます。ただ、その吉は「偽りがないこと」が条件です。少しでも下心や計算が入ると、同じ行動でも結果がまるで変わってしまう。无妄は、行動そのものより、行動の奥にある心の在り方を問う卦です。

象伝は、昔の王は天の時にかなうよう努め、万物を育てたと説きます。時の流れに逆らって無理に結果を取りにいかず、育つべきものが育つよう手を添える。自分の思い通りにしようとする力みを抜くことが、无妄の時の過ごし方です。

恋愛・人間関係で天雷无妄を得たとき

恋愛や人間関係の无妄は、駆け引きのない素直な心が求められる時を表します。

片思い

片思いで无妄を得たら、計算や駆け引きをやめる時期です。わざと返信を遅らせる、気を引くために他の人の話をする、といった作戦は、无妄の時には裏目に出ます。好きなものは好きと言い、楽しかったことは楽しかったと伝える。ありのままの気持ちで接することが、いちばん相手の心に届きます。

无妄には、思いがけない出来事の意味もあります。予定していなかった場所での再会や、ふとしたきっかけで話す機会が生まれる場面も、この卦の象に含まれます。機会を無理につくろうとせず、目の前に来たものを素直に受け取ってください。

交際中・復縁

交際中なら、相手を思い通りに動かそうとする気持ちがないか振り返る時期です。相手に変わってほしいところがあるなら、遠回しに試すのではなく、率直に話してください。无妄の関係は、飾らず、隠さず、裏表のない関係です。

復縁を占ったときは、相手の気を引くための策を練るより、自分が今どう生きているかを誠実に整えることが先と読みます。九五の爻は、自分に原因のないところで生じたこじれは、慌てて手を加えずにいれば自然に解けると説いています。

職場・友人関係

職場や友人関係では、誤解や巻き添えに遭ったときに出やすい卦です。六三の「无妄の災い」は、自分に落ち度がないのに疑われる場面を描いています。弁解に力を尽くしすぎず、ふだん通り誠実にふるまい続けることが、疑いを晴らすいちばんの近道です。身に覚えのないことで責められてつらいときは、信頼できる人に経緯を話し、気持ちを整理してください。

仕事・選択で天雷无妄を得たとき

仕事の无妄は、見返りを計算せずに目の前の仕事に打ち込む時です。評価や昇給を気にしすぎると、かえって仕事の質が落ちます。やるべきことを誠実に積み重ねることが、結果として認められる道です。

六二の「耕さずして穫り、菑せずして畬す」は、収穫を数えながら耕すのではなく、ただ耕すことに心を向けよ、という意味に読まれます。開墾したばかりの土地がすぐに豊かな畑になると期待せず、手入れそのものに集中する。成果を急ぎたくなる時ほど、この言葉が支えになります。

選択の迷いでは、損得の計算より、自分の気持ちに偽りがないかを基準にしてください。条件はよいのに心が動かない道より、心から取り組みたいと思える道のほうが、无妄の時には実を結びます。一方で上九は「无妄なれども、行けば眚い有り」と説き、正しい心であっても、時が合わなければ動かないほうがよいと告げます。上爻を得たら、新しく動き出すのはしばらく見送ります。

うますぎる話に心が動いたら、无妄の時は特に、その話に作為がないかを確かめてください。お金の面では、思いがけない出費に備えて日頃の暮らしを整えておくと安心です。待ち人は予定していない時にふいに現れる形で読み、探し物は、意外な場所や、探していない時に見つかるものと読みます。

初爻から上爻までの読み方

无妄の六爻は、偽りのない心がどんな場面で試されるかを描いています。

三爻と五爻はどちらも、自分の外からやって来る出来事を扱っています。无妄の卦は、自分では選べない出来事にどう向き合うかまで含めて、自然体の生き方を説いているのです。

天雷无妄 爻ごとの要点と之卦
爻爻辞の要点得たときの読み之卦
初九无妄にして往けば吉偽りのない心で踏み出す天地否
六二耕さずして穫り、菑せずして畬す見返りを数えず手入れに励む天沢履
六三无妄の災い落ち度のない巻き添え。誠実に過ごす天火同人
九四貞にすべし。咎无し今の正しさを守って動かない風雷益
九五身に覚えのない不具合手を加えず見守る火雷噬嗑
上九无妄なれども、行けば眚い有り時が尽きている。新しく動かない沢雷随

変爻と之卦の見方

无妄で変爻が出たら、偽りのない心がどんな形に移っていくかを読みます。一つの爻が変わったときは、その爻辞を今の自分への問いとして受け取り、之卦を、そこから開ける道筋として添えます。

上九が変わると沢雷随になります。自分から動くとつまずく時に、流れに従う卦へ移るので、先頭に立つより、信頼できる人や時の流れについていくのがよいと読みます。初九が変わると天地否になり、素直に踏み出した先でも、通じない壁に当たる場面があると示します。それでも初九は吉なので、壁を承知で誠実に進むことが答えです。九五が変わると火雷噬嗑になり、自然に解けるのを待ったあと、残ったこじれには決着をつける段階が来ると読めます。六二が変わって天沢履になる場合は、見返りを求めず、礼儀を守って一歩ずつ踏みしめるよう促します。

複数の爻が変わったときは、无妄の卦辞にある「正に匪ざれば」という条件を軸に、之卦の言葉と照らし合わせます。无妄の六爻のように、同じ誠実さでも位置によって動くか留まるかが分かれる理由は、爻の読み方で確かめられます。

よくある質問

天雷无妄の読み方は

「てんらいむぼう」と読みます。上卦の天(乾)と下卦の雷(震)の象に、卦名の无妄を続けた名前です。无は無と同じ意味の字で、无妄は偽りや作為がないことを表します。

天雷无妄は吉卦ですか

卦辞に元・亨・利・貞がそろう吉の卦です。ただし、心に偽りがないことが条件で、下心や計算があればつまずくと戒めています。上九のように、正しくても動かないほうがよい爻もあります。

恋愛で天雷无妄が出たらどうすればいいですか

駆け引きをやめ、ありのままの気持ちで接してください。気を引くための作戦は裏目に出やすい時です。思いがけないきっかけで話す機会ができたら、無理に意味づけせず素直に受け取ると関係が動きます。

「无妄の災い」とは何ですか

六三の爻辞で、自分に落ち度がないのに巻き添えになる出来事を表します。つないであった牛を通りすがりの人が連れ去り、村人が疑われるという話が添えられています。弁解に力を尽くすより、ふだん通り誠実に過ごすことが答えです。

あわせて読みたい

占いの基本と辞典の記事

占いの基本と辞典の記事をすべて見る 読みもの一覧